弁理士先生!特許権の譲渡っていったい何?
お答えします!特許権の譲渡とは権利の一部、または全部を他人に譲り渡すことを言います。
この前伝導率が良い車のエンジンの仕組みを発明したんだけど、この仕組みを購入したい方がいて
けどこれは、まだ特許を取得していない。
特許庁で特許権として認められた権利しか受け渡しは出来ないの?
なるほど。でもそれも問題はないです。
特許は出願とは関係なく発明した時点で発明者が権利を持っていて、これを特許を受ける権利と言います。
そして特許を受ける権利もまた他人に譲渡することが可能です。◎

【特許権の譲渡】
例えば、特許を取得したエンジンを搭載している車を販売する甲があります。
諸事情により事業をたたむことになりましたが、この車は多くの人々に喜ばれるためエンジンの仕組みである特許の権利を乙に譲ることにしました。これは特許の譲渡に該当します。

【特許を受ける権利の譲渡】
では、次に発明者Bが車のエンジンを発明したとします。
発明しただけではエンジンとして販売することは難しいので、エンジンを車に搭載し、商品化する必要があります。
そのため、発明者Bは企業Aに特許を受ける権利を渡し、次に企業A内で商品化や販売のステップに進みます。
この段階ではまだ特許権を取得していません。
ですが、これも特許を受ける権利を発明者Bから企業Aに譲渡していることに該当します。

【特許を受ける権利の二重譲渡】
では、車のエンジンの開発のみを行っているア社があるとします。
特許を取得できるほど画期的なエンジンの開発に成功し、イ社に譲渡しました。
その後に同発明にウ社にも譲渡した。

そしてウ社が特許庁に出願を行い、次にイ社が出願を行いました。
ウ社のエンジンは特許として認められましたが、イ社の特許はウ社が先に出願していることを理由に拒絶されました。

イ社はア社と契約を結んだ際に「他の会社には譲らない。」と知らされていたことで購入にいたりました。それにも関わらずイ社は特許権を得ることが出来ませんでした。イ社は納得出来るでしょうか。
【特許法第34条第1項】
勿論二重譲渡を行う場合には、各社へ事前に確認を行う必要があります。
ですが、稀に手違いで問題が生じる場合もあります。
その場合に特許法第34条第1項では、特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしていなければ、第三者に対抗することが出来ない。と定められています。
【結び】
なるほど!譲渡にも色々と種類があるんだね。
そういうことです。発明とは情報です。
そのため一度得たものを「どうぞ」と渡したことで失うことが出来るものではありません。
ですが、色々な事情で情報の受け渡し、権利のやり取りは生じるものです。
起こりうる問題は事前に防ぎ、起きた問題には適切な対処を施すことが非常に重要と言えます。