これマネしたら罰金
ロバート秋山の“体ものまねTシャツ”には、実は特許があるって知ってた?
お笑い好きなら一度は目にしたことがあるであろう、ロバート秋山さんのあの“体ものまねTシャツ”。テレビ番組やYouTubeなどでたびたび披露されていて、「またやってる!」と笑ってしまうあのネタ、実はただのギャグではないんです。
なんと、この“体ものまねTシャツ”は正式に特許登録されているのです!
発明の名称は「小道具」?!
気になるその特許の内容を少し覗いてみると、発明の名称はなんと「小道具」。説明文には「瞬時に顔を別人に変化させて観衆を笑わせ或いは驚かせる小道具」とあります。まさにロバート秋山さんがやっていること、そのままですよね。
一見すると、「そんなのTシャツに顔プリントしてるだけでしょ?」と思われがちですが、この“体ものまねTシャツ”、ちゃんと特許文献としても完成度が高く、他の本格的な特許出願と比べてもまったく遜色のない内容になっているんです。
芸人さんがネタのためにここまでしっかりと準備しているという事実、ちょっと感動しませんか?
簡単に作れそうに見えても…
とはいえ、このアイディア、見た目はとてもシンプルで「自分でも作れそう」と思ってしまう人も多いかもしれません。でも注意が必要です。実際にロバート秋山さんが特許を持っているということは、勝手にマネして商業的に使うのはNG。
趣味でこっそり真似するくらいなら問題にならないかもしれませんが、イベントで使ったり、SNSでネタにしたり、ましてや販売したりするのは法的なリスクを伴う可能性があります。
エンタメ×知財の面白さ
今回のロバート秋山さんの事例のように、エンタメの世界と知的財産が交わる瞬間って、すごく面白いですよね。笑いの裏に、しっかりとした発明や戦略が隠されている。芸人さんたちも、ただ笑いを取るだけでなく、自分のアイディアやネタを守るために知財の力を活用しているというわけです。
今後も、こんな「実は特許があるエンタメアイテム」、掘り下げていくと色々見つかりそう。思わぬところに知財の世界が広がっているかもしれません。
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特許権譲渡に関して
お答えします!特許権の譲渡とは権利の一部、または全部を他人に譲り渡すことを言います。
この前伝導率が良い車のエンジンの仕組みを発明したんだけど、この仕組みを購入したい方がいて
けどこれは、まだ特許を取得していない。
特許庁で特許権として認められた権利しか受け渡しは出来ないの?
なるほど。でもそれも問題はないです。
特許は出願とは関係なく発明した時点で発明者が権利を持っていて、これを特許を受ける権利と言います。
そして特許を受ける権利もまた他人に譲渡することが可能です。◎
【特許権の譲渡】
例えば、特許を取得したエンジンを搭載している車を販売する甲があります。
諸事情により事業をたたむことになりましたが、この車は多くの人々に喜ばれるためエンジンの仕組みである特許の権利を乙に譲ることにしました。これは特許の譲渡に該当します。
【特許を受ける権利の譲渡】
では、次に発明者Bが車のエンジンを発明したとします。
発明しただけではエンジンとして販売することは難しいので、エンジンを車に搭載し、商品化する必要があります。
そのため、発明者Bは企業Aに特許を受ける権利を渡し、次に企業A内で商品化や販売のステップに進みます。
この段階ではまだ特許権を取得していません。
ですが、これも特許を受ける権利を発明者Bから企業Aに譲渡していることに該当します。
【特許を受ける権利の二重譲渡】
では、車のエンジンの開発のみを行っているア社があるとします。
特許を取得できるほど画期的なエンジンの開発に成功し、イ社に譲渡しました。
その後に同発明にウ社にも譲渡した。
そしてウ社が特許庁に出願を行い、次にイ社が出願を行いました。
ウ社のエンジンは特許として認められましたが、イ社の特許はウ社が先に出願していることを理由に拒絶されました。
イ社はア社と契約を結んだ際に「他の会社には譲らない。」と知らされていたことで購入にいたりました。それにも関わらずイ社は特許権を得ることが出来ませんでした。イ社は納得出来るでしょうか。
【特許法第34条第1項】
勿論二重譲渡を行う場合には、各社へ事前に確認を行う必要があります。
ですが、稀に手違いで問題が生じる場合もあります。
その場合に特許法第34条第1項では、特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしていなければ、第三者に対抗することが出来ない。と定められています。
【結び】
そういうことです。発明とは情報です。
そのため一度得たものを「どうぞ」と渡したことで失うことが出来るものではありません。
ですが、色々な事情で情報の受け渡し、権利のやり取りは生じるものです。
起こりうる問題は事前に防ぎ、起きた問題には適切な対処を施すことが非常に重要と言えます。
特許調査
この前僕たちが特許を持つ商品と同じ商品が販売されているのを見かけたんだ・・・。
そうなのか。それはとても困るね。特許調査を行った方が良いかもしれない。
特許調査とは、発明が特許要件を満たしているか、また他社の権利を侵害していないかを確認する調査を言うよ!具体的には以下のようになる!
① 先行技術調査
② 侵害防止調査
③ 無効資料調査
④ 技術動向調査
⑤ SDI調査
一つ一つ丁寧に説明するね。
まず①先行技術調査とは、過去の出願や文献で同様の発明がないか確認する調査のことを言うよ。
特許は“新しい”ものである必要があるんだ。(新規性)
そのため既に公表されている内容に関しては、新規性を有していると認められない。
また出願前に過去の同様技術を確認して、想定される拒絶理由を考え、明細書を検討したりもする。
侵害防止調査とは自社の製品やサービスが他社の知的財産を侵害していないかを確認し、侵害のリスクを最小限に抑えるために行う調査を言うよ。
確かに自分たちが他の会社の特許を侵害していたら大変だ。
では、③無効資料調査って何?
特許庁の文献の見落とし等で新規性、進歩性が認められて登録になった特許に対しては、出願日より前の文献を引用して既に登録された特許の権利を無効にすることが可能となります。
つまり無効資料調査とは、他社の特許を無効にするための調査ということだね。
登録になったから必ず安心というわけではないんだね。
勿論審査は必ず厳正に行われてはいるよ。
④技術動向調査とは、研究に着手する前や企画段階での関連技術の開発動向や参入企業の動向を広範囲に確認し、世の中の技術動向を調査することを言うよ。
企画・製作まで綿密に行った先で製品が特許侵害になる可能性が有って、販売停止となってしまっては、費やした費用や労力は水の泡だよね。そのため実際に取り掛かる前に競合他社の動きを把握するために行うんだ。
そして最後に⑤SDI(Selective Dissemination of Information)調査に関して説明するよ。
Selective Dissemination of Infomationとは情報の選択的配信という意味を持って、どのような特許が出されているか調べる調査の一つだよ。
特定のキーワードや技術分野に関連する特許公報の情報を一定の期間ごとに取集し、各企業の技術動向や競合他社の活動を定期的に確認します。SDI調査は、特許の権利侵害や自社の商品・サービスの改良のために行うんだ。
そうなんだ。
活用方法や気がかりに合わせて対応するんだ。その際に専門的な知識のみならず法文や条文等との紐づきも考慮する必要があるから、ご気軽に是非相談してね。
特許法が定める発明とは
特許とは、発明者が自分の発明に対して、一定期間独占的な権利を得ることができる法的な権利及び制度を指します。簡単に言えば「発明を守る制度」です。【詳しくはコチラ】
発明は多額の費用、膨大な知識、人々の労力をかけて生み出されたものであるにも関わらず形状を持つものではないため、発明を保護するためには秘密にする以外策がありません。
ですが、その発明が産業上活用されなければ、投資したものは無駄ということになります。
そこで、特許制度はこういったことが起こらぬよう、発明者には一定期間、一定の条件のもとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用の機会を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。
つまり特許制度の保護対象は「発明」である必要があります。
特許法では、「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義し(特許法第2条第1項)以下の4点を満たしたものを「発明」としております。
【 発明 】
① 自然法則を利用していること
「自然法則」とは、自然界において経験的に見出される科学的な法則をいいます。
特許法上の「発明」として、課題に対する解決手段が自然法則を利用している必要があります。
・経済法則などの自然法則以外のものは該当しません。
・じゃんけんなど人為的な取り決めも認められません。
・エネルギー保存の法則や万有引力といった自然法則自体も保護対象とはなりません。
② 技術的思想であること
また、知識として保護できる必要があり、誰がその技術を利用しても、同一の結果が得られる必要があります。
フォークボールの投球方法等の個人の技能によるものや、絵画や彫刻などの美的創作物、機械の操作方法についてのマニュアル等の単なる情報の提示は技術的思想に該当せず、特許法上の「発明」には該当しません。
③ 創作であること
「発明」は、創作されたものでなければなりません。したがって、天然物の単なる発見などは、特許法上の「発明」になりませんが、天然物から人為的に単離精製した化学物質は「発明」に該当します。
④ 高度のものであること
「高度のもの」は、主として実用新案法の考案と区別するためのものであるので、「発明」に該当するか否かの判断に当たって、「高度」でないという主観的な理由で「発明」に該当しないとされることはありません。
上記を満たしたものが「発明」と認識され、その後特許庁の審査を受けることになります!
特許侵害による事件(サトウの切り餅事件)
なぜ市販のお餅があれほど美味しく綺麗な形状のまま焼きあがるかご存じですか?
その秘密はスリットにあります。(餅に入っている切れ込みのこと。)
切れ込み部分から蒸気が逃げることにより、美しい見た目を保ちつつ、餅の熱し方に工夫が加わっているのです。そのため、トースターに入れたままにするだけで綺麗かつ美味しい仕上がりにすることが出来るのです。その技術は、企業の努力の先で生まれたものです。
【 サトウの切り餅事件 】
2009年その技術をめぐって裁判が起きました。
きっかけはサトウ食品工業株式会社が販売した「サトウの切り餅」です。
訴訟を起こしたのは越後製菓株式会社です。
訴訟の内容としては「サトウの切り餅が越後製菓株式会社の取得した特許権を侵害している。」というものです。
【 裁判の論点 】
原告:越後製菓株式会社 被告:サトウ食品工業株式会社(サトウの切り餅販売元)
裁判の論点となったのは請求項の解釈です。
※請求項とは:特許文書においては発明を特定するための記載です。
出願文書には下記のような記載がされております。
「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け」
この請求項が示す範囲に底面や上部に切れ込みがある餅を含むのか否かという点が争点でした。
原告側は、「上記表現は切り餅の切れ込みとして、側部のみならず、上部や底部への挿入も包含する。」と主張し、一方被告側は「出願特許文書の切れ込みは側部のみであり、サトウの切り餅には上部にも切れ込みがあるため特許権を侵害していない。」と訴えました。
東京地裁は、原告の言い分を却下し、「載置底面又は平坦上面には切り込みがない。」と判断することが自然と判断しました。そのため第一審ではサトウ食品工業株式会社が勝訴となりました。
ですが、その後裁判は知財高裁に持ち込まれました。
知財高裁は請求項の表現のみならず、全体の構造も含めた文言の解釈を論点としました。
裁判官は、「載置底面又は平坦上面ではなく」と「この小片餅体の」の文章の間に句読点がないことを指摘しました。すなわち「切餅の載置底面又は平坦上面ではなく」という文章は「側周表面」の修飾語としての表現だと解釈することが自然と判断しました。
そして結果は、越後製菓が逆転勝訴することとなりました。
【 結び 】
裁判は5年にも及び、サトウ食品工業株式会社が15億円の損害賠償を支払うこととなりました。それだけではなく、製造および販売の禁止、在庫品および製造装置の廃棄も命じられました。
またサトウの切り餅は切れ込み方法を変更したうえでお餅を販売することになりました。
このように自社の製品がお客さんに喜ばれるために企業は日々努力しています。
ですが、費用や時間を費やした試行錯誤の先に生まれた発明を適切に保護することも非常に重要になります。
また、特許を出願するに当たってはどの技術を守りたいかで些細な表現も変わります。
「餅の切れ込み部分が重要なのか」「切れ込みを入れること自体が重要なのか」
その小さな着眼点一つで変わってくるものが沢山あります。
そのため特許出願までの道のりで弁理士と細かくすり合わせ進めていくことがとても大切になるのです。
特許とは
「特許」皆さんも一度は耳にしたことがありますでしょうか?
特許とは画期的な発明に対して「発明を公開する代わりに一定の期間発明を独占させる。」ことです。
【 発明とは 】
イギリスで誕生した蒸気機関は人々に一度に大きな荷物を早く移動させる手段を与え
エジソンが発明した電球は人々の暮らしを豊かなものにしました。
またノーベル賞を受賞したips細胞はこれからの人々への架け橋になることが期待されています。
発明は生み出されるまでに膨大な知識や費用、人々の労力が費やされています。
それにも関わらず発明が簡単に模倣されてしまっては研究者や企業の意欲を欠くことになります。
その様な環境の元では産業の十分な発展を期待することが出来ません。
そういった事態を防ぐために発明に権利を付与することにしています。
【 特許の公開原則 】
ですが、ニュートンが「りんごが落ちる瞬間から万有引力という概念を思いついた。」という逸話があるように新しいものは既存のものを参考に生まれます。
発明は新しいものである必要がありますが、どんな発明者もいきなりアイデアが降ってくるわけではありません。
地道に試行錯誤を重ねその先で発明に出会うことが出来ます。
研究に励んでいる人々は他人の文献を読むことで自身の研究の一つの参考にすることが出来ます。
そして、それが更なる産業の発展に繋がることになります。
そのため特許庁に提出された特許出願は原則的に公開されます。
【 保護期間 】
また、発明がいつまでも独占的なものとしてしまうと平等な産業の発展が期待できるでしょうか?
その発明を利用した商品を作りたい人も出てくるでしょう。
そして長い時間が経過した発明はその時代において発明と呼べるでしょうか?
エジソンが生み出した電球は発明です。
ですが、今の時代では発明とは呼べません。つまり発明はその時代の背景も非常に重要なのです。
20年もたてば時代も大きく変わっています。
なので、特許は保護期間が定められており、その期間は出願から20年とされており。
20年経った特許に関しては誰でもその技術を利用することが出来るように特許権は満了消滅します。
多くの“労力”“費用”“知識”が注がれている研究ですが適切に保護することで更なる科学の発展が期待でき、その制度を管理することで平等かつ繫栄した産業の発展が期待できるのです。
特許とはそのような制度を指すのです!